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今泉はかすかに鼻のあたりを不満げにふくらませた。
「え、何だつて、徒歩てくで通るかつて?」
「やあ」
と、いきなり云つた。
すると、道平の半ばひきつゝた表情の中には、又あの悦ばしさが、かうして歩いて来たことを人に見られるといふ満足が、ゆつくりと、何だか紙のずれるやうな工合に上つて行つた。
と、急に練吉が小耳にはさんで云つたのは、多分黙つて他のことを考へていたのだらう。
房一のまはりには三人の男が立ちかこんで、黙つて治療の様子を見まもつていた。背中をむき出しにして横向きに寝た男は、傷を洗はれるときに呻うめいた。血の気の引いたその顔にはどす黒い蒼白さが現れた。
この分では永くなりさうだと思つて、房一が腰を浮かし気味にすると、
結婚してもう三四年になるが、いまだに出たり入つたりを繰り返している茂子は、練吉にとつては三度目の妻だつた。最初のは男の子を一人のこして去つた。二度目は半年もたゝないうちに大石の方から帰した。今度の茂子の場合だつて、当人も居辛からうが、大石の側でも面白くはない、どうでもいゝと云つた調子であつた。そして、ふしぎなことにはかういふ態度は大石の正文老夫婦から出ているので、練吉の方は吾不関焉われくわんせずえんといつた風があることだつた。
練吉は顔をしかめ、手を振つた。
「折角のところを、突然でまことに失礼でありますが」
「君達は一体何者だ!」