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    と、ゆつくりはじめた。

    富田はすぐ又自分の方に話をひきとつた。

    男はじろじろと房一を見ていた。

    房一はあの騒ぎの晩、土手に駆け上つた瞬間高張提灯の明りで見合つた喜作の、禅坊主めいた精悍な顔が、その後度々会つたにもかゝはらず、妙にその時の顔だけがいつまでも印象に残つていた。

    「御機嫌だつたね」

    むかしからおれとこの人とは仲よしだつた――それは押しかくすことのできない悦ばしさだつた。

    「ねえ。――はやく。――患者ですわ」

    「私もこれで元は法律書生でしてね。司法官か弁護士試験でも受けるつもりで、神田の私立大学に通つていたもんです」

    「あんたは鮒をたべなさるかね」

    「あいつももう仕かたがないのですよ。『青ペン』通いばかりしているのですから。」

    小谷が対岸から流れを指しながら叫んでいた。房一の竿の前を渡渉とせふするので承諾を求めたのだ。

    「なあ、先生」

    が、練吉が駆け登つたのを見ると、先方の男は急に威丈高になつて怒鳴つた。

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